その場の勢い

2月1日 月曜日
 「1月は往ぬる2月逃げる3月去る」の ”往ぬる” をずっと方言だと思っていた。
 昔よくジイちゃんが『そろそろ往ぬる(帰る)で』と言ってたりもしていたんで、絶対に西の方言だとばかり思ってたんだが、ググってみたら <いちげついぬる・にげつにげる・さんげつさる>と読むらしい。「正月から3月までは行事が多く、あっという間に過ぎてしまうことを調子よくいったもの」ということらしいのだが、 ”往ぬる” が方言じゃなかったことより <いちげつ・にげつ・さんげつ> と読むことに衝撃を受けた。
 日本語って美しいけど色々面倒だなと思う。

2月2日 火曜日
 明日は立春だが、2月3日が立春なのは実に37年ぶりのことらしい。
 その前日である今日が節分なのだが、なんと2月2日が節分なのは124年ぶりらしい(笑)。
 文末に「(笑)」と書いたが、そりゃもう笑うしかないでしょ。
 だって、現在の日本最高齢でギネス世界記録保持者である “田中力子 (タナカ・カネ)” さんが118歳、この124年ぶりと言われる2月2日の節分を経験した人が世界中どこにもいないという…。
 
 124年前を『1897年(明治30年)の出来事』とググったら、最初に「主な出来事 2月2日-地球の公転周期に微妙なずれが発生し、2月2日が節分となった」とサラッと書いてあった。
 もちろんWiki上の文言なので、どなたかが執筆された文章だとは思うけど、”えっ!? そんなサラッと言うこと?” という思いが沸々と湧いてくる。ただ、「それ以上のことを詳しく調べてみよう!」という気にもなれず、1987年の124年前が節分だったかどうかについては、闇の中へ葬ることにした(笑)。

 コンビニやスーパーに行くと、恒例の『鬼の面が付いた豆』が売ってるけど、この緊急事態宣言下・外出自粛期間に家の外で豆まきをするご家庭はあるんだろうか?少なくともウチの周りではそんな声は聞こえないので、この辺りではやってないみたいだ。
 もちろんオレも独りで豆まきをする度胸なんて無い。いや、”度胸” とかじゃないな、あとで玄関周りの豆を掃除するのが面倒なだけだと思う。
 こうして日本の美しい風習がどんどん消えていく(苦笑)。

2月5日 金曜日
 amazonでDTM用のHDDをポチろうとしてたら「あなたへのオススメ」的な表示が出たので見ると、Wi-Fiを経由して家の中を写す監視カメラがリストアップされてた。
 スマホ対応で、外出中でも家の中の様子が確認できるというシロモノだ。
 昨年はあちこちに行く機会が多く、長いと1ヶ月近く家を空けてたこともあったので『エエな…コレ』と思った瞬間にポチった。
 当分どこか旅に出るような予定もないのに・・・。
 その場の勢いって怖いなぁと思うw。

2月16日 火曜日
 コロナ禍の中で多くの企業が「テレワーク」に移行し、都心に聳え立つ自社ビルが不必要なものだとして 大きな企業さんらが新たな業務体制を模索し始めてから もう1年近くが経つ。
 世の中全体が停滞している中でもまだヤれる仕事があれば良い方で、エンタメ業界なんて停滞どころか衰退に近い状態が長く続いている。
 過去にお世話になったレコーディングスタジオも業務終了するところが増え、メジャーメイカーでバリバリとヒットを飛ばしていたディレクター達も「退職します」と なかなか少なくない人数から連絡を貰ったりしてショックを受けると同時に「そういう時代なの?どうなん?」という思いが湧いてくる。

 SNSの飛躍的な普及や動画サイト利用者の増加によって、もう数年前から一部では ”大きな事務所で音楽やらなくても良いんじゃないか” とか ”メジャーで活動することを目標にしなくていいんじゃないか” という風潮にはなっていたのだけど、それだけでは無くて「ディレクションも自分で(セルフ・ディレクション)」、「マネジメントも自分で(セルフ・マネジメント)」、という新たな動きを 我も我もと真似しはじめ、元々あった<メイカー>や<ディストリビューション>や<プロダクション>というビジネスの枠組みに横穴が開きはじめている。
 そりゃ才能に溢れまくっている人は、全てを自分でやった方が、変な手垢もつかず純粋にその人の思い描いたカタチがリスナーにダイレクトに届くだろうけど、誰もがその形で成功するなんて有り得ないし、もっと言えば 勘違いしたアマチュア気質の人の散漫な作品がネット上のあちこちに散らばるって、考えただけでも ちょっと怖い(苦笑)。

 オレは個人的に『ジャッジメントする人やディレクションする人は居た方がいい』派なので、なんでもかんでも自分自身で行ってハイクオリティな作品が作れる人なんて全体の1%もいないと思ってます。
 そりゃ時にはジャッジメントする人がウザかったりメンドくさかったりするから、いない方がいいなぁと思ったりもするけど(作品を作ってる時は毎回ずっと思ってるw)、やっぱ独りで完結したものは なかなか大勢には届きにくいと思うのですよ。
 SNSや動画サイトなどが「大勢に届く ”可能性のある” 媒体」として存在してるけど、あくまで ”可能性がある” というだけの話だから。
 最初から最後まで全て自己完結で、その作品が動画サイトやSNSを通じて広く世の中に知られるケースもあるけど、そんな力のあるアーティストは一握りで、そういう人たちは もしSNSや動画サイトが無くても 何かのカタチで必ず広く知られる存在になると思うのです。

 ・・・みたいなことをジットリと考えながら、ここ数日は工事現場で4ヶ月ぶりのアレコレをやってます。
 オレ自身も、これからもう10年、もしかしたら15年、みたいな先を考えながら、音楽屋として生きる形を模索する、そんな必然的なタイミングなんだと思っています。

2月22日 月曜日
 まだオレが駆け出しどころじゃ無く この業界でヨチヨチ歩き出したくらい・・・20年近く前になるのですが、当時 「世の中にまだ知られていない名曲を、より多くの人に聴いてもらえる方法はないか?」と考えて、自分が担当していたラジオ番組から得た発想をコンピレーションアルバムに落とし込み、その連動企画として「コンパイルさせて貰った作品を書いたシンガーソングライターさん達の歌を生で聴いて貰う」という『オムニバス・ライヴ』を、アルバム発売の16日後からスタートさせた。
 毎回4〜5組のアーティストさんに出演してもらい、幕間にそのアーティストさんの曲や歌い手の人となりについてオレがマイクを持って舞台の隅で語る・・・そうすることによって転換の時間もライヴ全体の構成として考えられるし、目当てのアーティストだけ聴いて帰るお客さんも少なくなるんじゃないか…という、当時としては”ちょっと変わったライヴ” だった。
 そのうち、出演してくれたアーティスト全員で最後に数曲ほどセッションしようという流れになり、『複数のシンガーソングライターが数組でオムニバス・ライヴをやって、最後に全員でセッションする』というカタチは、その後 都内の多くのライヴハウスで同様なイベントが始まったり、全国に波及して行ったことを考えると、池尻の事務所の天井付近を、タバコの煙でモクモクにさせながらオレと部長で頭をヒネリ倒して出したアイデアは かなり画期的だったんだなと思う。

 そのイベント・ライヴの記念すべき1回目は、六本木の某ライヴハウスが こけら落とし公演を終えた翌日だった。
 1回目ということもあって、確か5組ほど出演して貰ったと思う。今では毎日テレビで見ない日は無いくらい売れっ子大御所になっている人も楽曲の縁で出演して貰ったりもしたんです。キャパ200人の小屋がパンパンどころか札止めになるんじゃないかと思っていたのだけど、その日来てくださったお客さんは60名程度。
 リベンジだ!と意気込んで開催した2回目は50人を切ってしまった。。。

 その2回目を開催した本番中、歌い終わったアーティストさんが袖にはけ、入れ替わりにオレがマイクを持ってステージに立つ。今 歌い終わったアーティストさんについて一言二言と語りはじめたその時、客席奥の螺旋階段に座った大きな体の男性がオレに手招きしている。(本番中よ!! 本番!)
 「え?コレ今すぐ行かないといけない感じじゃん…」とただならぬ雰囲気を感じたので 喋りを早々に切り上げて、ステージから降りてそっちに向かう(本番中よ!! 本番!Part2 w)と、手招きしていたのはBossと懇意にしていたプロダクション社長。見た目がめっちゃイカツい人なんです。
 その社長がいきなり「おい、今すぐこの小屋の全部の入り口に鍵かけろ!絶対に一人も帰らせるな」って超真顔で言われるので「え?・・・え?マジっすか…」みたいな状態 & 直立不動になってしまったのだけど、そのあと 社長から『今日の40数人のお客さんを何年後かに1000人に増やす方法』というのを とてもシンプルに、そして心の底の汚泥を全部掻き出した先の底に届くんじゃないかくらい優しくまっすぐな言葉で語って貰った5分間があったお陰で(もちろんその日から言われた通りに実行)、実はこの4年後に このライヴ・イベントは数千人を動員するイベントになってるという嘘のようなホンマの話があるんです。

 その後、そのイカツい社長とお会いする機会がいつのまにか減って行って(なんでなのか未だにわからない)、少なくとも16〜7年くらいご無沙汰してたのですが、ひょんな事から今日 またご縁をいただきまして。
 「あれから20年くらい経ちましたよ!」って伝えたら、『20年ってすごいね。お互い元気で良かったよ^^』と。
 ”お前、今ナニやってんだ?” でもなく、 ”まだ音楽やってんのか?” でもなく、「音楽やってて当たり前だろ」的な温度で『お互い元気で良かったよ』というロケンローなメッセージ、めっちゃ嬉しかったなぁ。


「少しずつ暖かくなって来てるなぁ」とか思ってたら、昨日と今日は鬼のように暑かった…(汗)。。。